作品 14

1992年 太刀 天田昭次作之
平成二二年皐月吉日 彫仙壽
刃長 73.2cm 反り 2.5cm
形状 鎬造り、庵棟、中切先猪首風となる。
地鉄 (じがね) 小板目肌よく詰む。
焼刃 (やきば) 華やかな丁子乱れ、匂本位に小沸つき、足よく入り、葉・飛び焼きかかる。
帽子 (ぼうし) 乱れ込んで、先小丸に浅く返る。
彫刻 表裏に角止め棒樋を彫り、樋内に表真の倶利迦羅、裏梵字・宝珠・蓮台を浮き彫りとする。
中心 (なかご) 棟小丸、鑢目筋違、先刃上がり栗尻、孔一。

大丁子あり、蛙子(かわずこ)丁子あり、それらが重花となって飛び焼きを交え、華やかな焼刃を構成する太刀である。
前出の備前伝の初期作から十八年が経過している。
当然、作風の変化や工夫があった。意図した刃文を得るための試行錯誤もあった。
中でも焼刃土は、無視できない大きな要素であった。 丁子刃は日本刀に現れた刃文のうち、最も複雑で、表現上の技巧性が高い。
土置きから刃文を、また刃文から土置きを類推するのは、常人にはまず不可能であろう。
丁子足で刃文を表現するのはたやすいが、やはり形で構成する丁子を見せたい。
狙いは、刃縁を硬く締めず、フックラとした丁子である。すると、得てして互の目丁子になりやすい。
制約条件にとらわれず、刃文の面白さを目指して試みたのが、この作である。
地鉄は、反射炉式精錬法によった。
どんな刃文も不可能ではない、との確信を持った。転機となった一刀である。

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